レタッチ技術

今、14号制作、終盤にさしかかっていますが、今日はレタッチについてお話ししたいと思います。
レタッチは、樹脂注型した後、作品に超微細な気泡跡が出てしまう場合に、そこを埋める方法です。そもそもこの気泡が出ないように研究をし続けて、今は真空脱泡機でかなりの精度で気泡のない注型ができるようになったのですが、しかしそれでも今回のように空気の抜けにくい型などの場合は微細な気泡が残ってしまうケースがあります。
しかしこの0.2mmくらいの気泡のためにボツではちょっとこのネコもかわいそうなので、なんとか埋める方法を研究しました。いつも使っている樹脂はポリウレタン樹脂なんですが、その小さな穴を何で埋めるか。さまざまなもので試しました。主にパテ系でいくつか試し、あとは接着剤系でこの樹脂に近い感じを試しましたが結局質感の違いがわかってしまうためかなり困窮してしまいました。
そこで質感の違いを感じないようにするには結局同じ素材で埋めるしかないだろうと考え、同じポリウレタン樹脂で埋めることにしました。それが現状です。さすがに質感が同じでほぼ全くわからないくらい見事にレタッチができます。
しかしいくつかの課題や問題はあります。まず、そもそもこの樹脂は2液性なので、ほんのちょっとの量、0.2gくらいでもA液B液を混ぜて硬化に180秒かかるので非常に機動性が悪く、気軽にレタッチはできません。そしてもうひとつ大きな問題が、このほんの0.2gくらいの樹脂でも硬化する瞬間に本当に微細な炭酸ガスの泡が発生してしまうことが多い、ということです。気泡の穴を埋めるための樹脂に気泡ができてしまうというなんとも困った状況です。そこでこのレタッチ用のほんの少しの樹脂のために真空脱泡機を使って脱泡して使うと、かなり抑えられます。しかしまだコンディションにはむらがあり、完全にコントロールはしきれていません。まだ研究中です。
ともあれ作品作りで気泡が出てしまった場合も、度合いによってはレタッチで仕上げることができるのでボツが減って、だいぶ完成率は上がりました。
あとはレタッチ用の少量の樹脂を気泡を出さずに硬化させる方法はもう少し研究したいと思ってます。

上の写真は超小さな気泡跡を、樹脂で埋めやすく、また食いつきやすいように適度な大きさに溝を掘っているところです。

楊枝の先でちょこっと、その穴に樹脂をたらし、硬化を待ってからサンドペーパーで均すと、まったくきれいに仕上がります。